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アーティスト学校派遣 山田恵理香さん「演劇ワークショップ」
今年度BEPPU PROJECTでは「次代を担う子どもの文化芸術体験事業(文化庁委託事業)」として、大分県内の小中学校40校にさまざまなジャンルのアーティストを派遣し、1校につき1日限りのワークショップを行っています。
11月後半は山田恵理香さんと一緒に、大分市立桃園小学校、中津市立山移小学校、別府市立石垣小学校を訪れました。
山田さんは福岡に拠点を置く劇団「空間再生事業劇団GIGA」で活動している演出家です。
ワークショップの始まり、円になって集まり子どもたちに話しかけます。
みんな「演劇」という言葉は聞いたことあるけれども、実際に観た経験はほとんどないようす......。
まず「演出家」とは、演劇の交通整備をする役割だと説明します。舞台に関わる人それぞれの描くイメージをとりまとめながら、お客さんの椅子の配置から当日の天候まで、いろいろなことを想定して物事を動かしてゆく。
そして、山田さんは"シンディ"という名前を胸に貼っていました。これは「ワークショップネーム」という、この場限りに付ける名前なんだそうです。子どもたちも普段呼ばれている名前でなく、この場限りの名前を自分で考えてきました。今日は担任の先生も「先生」ではありません。もちろんシンディ自身も先生ではなく「進行役」だと位置づけます。
シンディはこの場所において、自分は誰なのか、みんなは誰なのか、今から何をするのか、ひとつひとつ整理しながら進めているように思いました。
観ていて面白かったのは「だるまさんがころんだ」。でも、いつもの遊びとは少しわけが違いました。本人曰く、シンディは世界でいちばん厳しい鬼なんだそうで、 みんながぴたっと止まるまで始まりません......。
もちろん途中で笑ったり、声を出したり人も出てくるのですが、「"笑う"のは、声帯が動いているということだからね」と、容赦なく壁に戻します(笑)。しかもシンディは「だるまさんが転んだ」とは口に出しません。静かにすっと振り返る、その挙動を読み取って立ち止まることが勝利のコツです!
少しずつ、少しずつ、始まりました。慣れてくると、今度は「片足立ち」+「誰かの身体とくっつく」というルールが付け足されます。
おお、「だるまさん」がすごい迫力! 時間が止まっているみたいですね。まるで彫刻作品のようです。
他に「ランドセルがころんだ」「カマキリがころんだ」「犬がころんだ」と、いろんなパターンで止まることもしてみました。
また、自分のワークショップネームを声に出しながら、自分で動き(振付)を考えてみることもしました。
言い方もいろいろ工夫ができます。「シ〜ン〜ディ〜」「シ!ン!ディ!」と声に出すだけでも、全然雰囲気が変わりますよね。両手を大きく広げる人、小さくピースする人、ジャンプする人、くるっと一周回る人。
考えてから動くのは難しいけど、好きな食べ物(ラーメンとか)を食べる仕草でもOKです。
野球やサッカーのフォームもじゅうぶん、"自分の動き"ですよね。
ひとりずつ披露し、今度はみんなで繰り返してみます。
2、3周もすると、だんだんグルーヴが起こってきます。独特の熱気。れっきとした振付家という感じです!
山田さんは、プロの演出家だって、脚本家だって、俳優だって、緊張するものはするし、恥ずかしいものは恥ずかしいといいます。
その話を聞いていたひとりの男の子が「そっか、大人になっても恥ずかしい気持ちなんてなくならないのか」と納得したのか、静かにうなずいてくれました。
"恥ずかしい"のは、自分が見られていることにきちんと気付いているから。今回のワークショップはそれを知るきっかけづくりだったのかもしれませんね。
演劇は、俳優だけでは成り立ちません。脚本家がいて、演出家がいて、舞台美術家がいて、照明家がいて、音楽家がいて、制作がいて、何よりお客さんがいて......。ひとつの空間に、ひとりひとりの役割があり、またその関係性を小気味よく崩してゆくことが、演劇の面白さなんだと再発見できたワークショップでした。
1995年、演出家の山田恵理香を主宰として旗揚げ。「一人一人が巨人となる」を目標とし、GIGA=巨人(ギリシャ語)と名付け、年3~4本のオリジナル作品を上演する。2000年より主宰を菊沢将憲(俳優・脚本家・演出家)と交代。その頃より「空間再生事業」の色彩を強くし、銭湯、一軒屋、ギャラリー、路上、バーなど、様々な空間を舞台に独自の活動を展開する。
ちなみに山田さんは大分県出身で、今回訪れた桃園小学校が母校だそうです! 自分の学び舎でワークショップができたことを、ご自身も喜んでおられました。うれしい偶然ですね。
文・BEPPU PROJECT 山脇
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